ロシアのカザンで開幕した世界ジュニア選手権。大会2日目の29日、日本からは伊藤洸輝(JOCエリートアカデミー)と西田玲雄(大阪水泳学校)が出場した。
午前10時から行われたグループA男子3M飛板予選では35名の選手が参加。コンピュータの都合から試合進行がスムーズにいかない場面が数多く見られ4時間もかかる試合となった。
このクラスにはシニア選手と見間違える位の大きな身体を持つ選手が多く、また高難易度の種目を選択している強豪がひしめいていたが、試合は後半ミスが目立つ展開となった。そんな海外勢を横目に伊藤は安定した演技を連発。10位で決勝進出を決めた。西田は2群と3群にミスが出て決勝へは進めなかった。得意の高飛込に期待したい。
夕方18時から行われた決勝では素晴らしい演技が次々と披露され、もはやジュニアの域を超えるような演技に観客席からは大きな拍手が送られた。
伊藤は気負いからか1本目の107Bをショートさせてしまったが、2本目からラストまでは堂々とした素晴らしい演技をすることができた。結果は10位。入賞には届かなかったもののこれを自信にしてさらなる挑戦をしてもらいたい。
勝ったのは地元ロシアのニキータ・シュライカー選手で、決勝12名の中で圧巻の演技だった。まるでオリンピックチャンピオンのザハロフ選手を思わせるような大胆な助走からのジャンプと美しい演技に地元の声援がいつまでも消えなかった。2位には中国、3位にはオーストラリアの選手が入ったが、特筆すべきことは3人ともが307C、407Cを選択していることと、ロシアが109Cと5337D、中国が207Cを選択していたことである。つまり、ジュニアであれど世界でトップを取るにはこの難易度が必須ということがいえるだろう。
終わってみると、エントリーした国の選手2名ともが決勝へ進出したのはイギリスのみで、ロシア、中国、アメリカ、オーストラリア、ドイツ、メキシコ、コロンビアなど前評判の高かった国は1名しか決勝へ進めなかったことを考えると、伊藤の決勝進出は大健闘であり、彼の大きなジャンプが後に続くチームJAPANのメンバーにとっても勢いのつく試合となったことは間違いない。

大会2日目、2試合目はグループB女子1M飛板飛込。26名の選手で競われた。このクラスは体格差が大きく、小柄で体重の少ない選手は苦戦を強いられた。また、試合開始早々コンピュータの不都合からしばらく試合が止まり、また審判員はフラッシュカード使用に変更になったりと選手を待たせる試合となり、これにより調子を狂わせた選手が続出した。どんな状況でもリズムを崩さず試合をこなさなければならないタフさが求められ、このクラスのジュニア達には非常に厳しい試合となった。
勝ったのはアメリカのマリア・コバーン選手で身体が大きく筋肉量、体重ともにこのクラスではナンバーワンで、ジャンプの高さで彼女に勝る者はいなかった。
またこのクラスでは制限選択飛を5本、自由選択飛を3本飛ぶが、何を自由選択飛で演技するかが勝負の明暗を分けたようだ。
1位のアメリカと2位、3位の中国選手の自由選択飛は3人ともが105B(DD2.6)と403Bを選択していたが、もう1本は勝ったアメリカが5333D(DD2.6)であったのに対して中国選手2人は203B(DD2.3)であった。このあたりの戦略もアメリカのコバーン選手が優位に立てた要因の一つではなかろうか。


大会3日目の30日にはグループA女子1M飛板飛込とグループB女子高飛込、男子3M飛板シンクロが行われる。日本からは宮本葉月(高知SC)と荒井祭里(JSS宝塚)、伊藤洸輝と遠藤拓人(JOCエリートアカデミー)が出場する。